文鎮化した富士通のPCの回復は、専門業者に依頼するか、FreeDOSをインストールしたUSBメモリーを使って最新のBIOSを上書きする方法しかネットに情報が無い。とくに後者のUSBメモリーを使う方法は成功しなかった事例も多そうだ。ここに、それ以外の方法で回復した事例があるので紹介する。ただ、本件は1つの成功事例ではあっても不確定要素を含んでおり再現性は保証できない。あくまで参考として見ていただきたい。
以下ダラダラと経緯を書いたので、全体を要約すると、
- 約半月ぶりに Fujitsu Celsius J580(以下J580)を立ち上げようとしたがビープ音と再起動を繰り返した。この時Fujitsuのロゴも出なく、キーボードも効かず、いわゆる「文鎮化」となった。
- ボタン電池を外すC-MOSリセットは効果が無かった。
- ネット情報を頼りにUSBメモリーを使ったBIOS再インストールに挑戦したが効果は無かった。
- 3.に準じた方法でWindows10のインストール用USBを起動することが出来て、そこからBIOSに入ることが出来た。
- BIOSで時刻を合わせ設定保存・終了を選んだ後、元のSSDからWindowsを起動する事が出来た。
という事である。 以下は経緯である。
6月中半に累積更新を適用し、しまっておいたFujitsu Celsius J580 に月末の累積更新を適用するため起動しようとしたら全く立ち上がらない。1回のビープ音と再起動を繰り返すのみでFujitsuのロゴも出ない。キーボードも無反応。やられた!、これが悪名高き文鎮化(レンガ化)か(このPCはサブのPCとして普段は使用せず定期的な Windows Update のみ行っている)。
富士通のサポートページでは「公開予定のBIOSは問題の発生を抑えるもので、既に問題が発生したものを復旧させるものではありません。」と事前の対策を呼び掛けており、問題が起きた後ではお手上げという状態だ。一方富士通のこのページを見る人の大部分は既に手遅れの人だろう。
そこでYouTubeで紹介されていたBIOSの更新をやる事にした。その概要は、32GB以下のUSBメモリーを用意し、それをFujitsuのWEB(国際版)で提供されているツール(FTS_BootStick_100_1088425.exe)でフォーマットする。 さらにそのUSBメモリーに同WEBからダウンロードし展開した自分のPC用のBIOSファイルを格納し、J580のUSBポートにに挿す。J580のメインボードのFrontPanelコネクタにあるRecovery端子をジャンパーでショートさせたあと電源をONにすると自動的にBIOSが上書きされる。この時DVDやHDD、SSDなどのストレージやその他のデバイスはディスプレイを除き予め外しておく必要がある。これで上手く行くはずだ。なお下図のRecovery端子はJ580のピンの配置であり、この上に被さっているソケットには両端に余計な1列の穴が空いているので場所を間違えないよう注意しないといけない(モデルや基板ごとの確認が必要)。
この方法はYouTubeでも紹介されているし、Fujitsu ESPRIMOでの成功例も多い。またWindowsではないがこのページにも同様の手順が書いてある。しかしこれをやってみたが全くダメ。ボタン電池を外してCMOSをクリヤーするのは最初に試したがダメ。ネット情報によると、古いバージョンのBIOSファイルの方が成功率が高いとかあり、真似してみても駄目。この方法でもしエラーが起きたとしても何回かビープ音がなるはずだが私の場合はリトライ(勝手に電源がON-OFF)を繰り返すのみでビープ音は鳴らずUSBから起動する気配がない。そうか、YouTubeでやり方を紹介していた人が仕事としては受けないと言っていたのはこういう事かと納得した。
上記ツールでUSBメモリーにインストールされるのはFreeDOSというMS-DOS互換のフリーのOSでUSB自身で起動できるよう(ブータブル)になっている筈だが私のJ580では起動されるようには見えない。この場合、考えられる原因は、(1)上記ツールの不備かUSBとの相性でUSBメモリーがブータブルになっていない、(2)ワークステーション用であるCelsiusではセキュリティや信頼性確保のため何らかの細工が行われておりFreeDOSの起動がブロックされている、(3)BIOSが完全に壊れ、例えブータブルUSBでも読み込めない、(4)BIOSの更新では現在と同じか或いはより古いバージョンを書き込むことはできない、等が考えられる。(1)を考え他のメーカのUSBメモリーでも試したがダメだった。
こうなったらハードウェア・ツールを使って最新BIOSを強制的にEEPROMに書き込むしかない、と諦めかけていた。狙いはこいつ(GD25B127D)だ。
単に書き込むと言っても門外漢の私が成功する確率は高くない。なぜならこのROMにはBIOS以外にPC固体の識別番号やMACアドレス等の固有情報が書き込まれている可能性があり、またチェックサムやMD5などセキュリティに関する情報も入って保護されいる可能性があるので単純に書き込めばよいというものでも無いだろう。 ROMの直接書き換えは最後の手段だ。
待てよ、ブータブルと言えばWindowsのインストーラもそうだ。ダメモトでやってみようと思い立ち、手持ちのWindos10 22H2のUSBインストーラで試した。Recovery端子を短絡しディスプレイ以外のデバイスを外したJ580にWindos10 のインストーラを挿して電源をONにする。すると、何とビープ音がするではないか。2回-4回-1回というパターンのビープ音を2~3回繰り返した後インストーラが立ち上がり、画面にメニューが表示された。
そこでキーボードを接続しメニューから「BIOSの設定(正確な名前は憶えていない)」を選択するとBIOSが立ち上がった。バージョンを確認するとBIOSは既に対策版のバージョン(R1.38.0)になっている。イケルかも・・・。
そこで電池を外したことで狂っていた日時を修正し、設定の保存・終了を選び一旦電源を落とした。どうも立ち上がりそうな雰囲気だ。そこでUSBインストーラを外し、文鎮化前まで使っていたSSD(Windows11インスト―ル済)をM.2ソケットに戻し、Recovery端子のジャンパーを外して電源をONにすると何事も無かったようにWindowsは立ち上がった。
Windowsが立ち上がればこっちのもの、後は普通のWindowsマシンとして扱えばよい。本来の目的であった累積更新を適用し DVDやHDD等残りのデバイスも接続してメデタシメデタシとなった。
BIOSが既に対策版になっていた理由には次の2つが考えられるが、どちらが正しいかは分からない。
(1)6月中旬のWindowsUpdateで既にBIOSは対策版になっていたがBIOSが使うデータ領域が破壊されたままだったので立ち上がらなくなっていた。
(2)ビープ音が鳴らず見かけ上起動しなかったBIOS書き換え用USBメモリーだったが実際には書き換えは行われていた。しかしBIOSの使うデータ領域が破壊されたままだったので立ち上がらなくなっていた。
個人的には(2)はBIOSの書き換えに分の単位で時間がかかると思うので現象と合わず、(1)が正解かなと思う。
終り