2021年9月26日日曜日

ダイソーの「吊るソーラーライト」をキャンドル化する Make flickering lantern from cheap solar light

ダイソーで100円の「吊るソーラーライト」を買った。

上面に太陽電池が張り付けてある。 昼間に太陽電池でニッケル水素電池(NiMH)を充電し、夜間はこの電力を使って発光ダイオード(LED)を点灯するものである。日が暮れて太陽電池の出力電圧が低下すると夜間モードになりLEDを点灯させるようになっている。 
このライトを選んだ理由は上面の太陽電池が4cm×4cmと100円のわりに他のライトより大きかったからである。

全体は上下に分かれ、上部(蓋に相当)が機能が集約された本体であり、下部は模様が透かし彫りで刻まれた箱である。

ソーラーライト本体はネジ4本を緩めることで簡単に分解できる。中には簡単な片面基板と単4ニッケル水素電池が入っている。

回路をトレースしてみると次のようなものである。

回路はYX805Fという4本足のICを中心に構成され、このICで全てを制御している。このICは太陽電池の電力をニッケル水素電池に充電するとともに、太陽電池の起電力が低下すると夜モードに切り替わりLEDを点灯させる。実測すると太陽電池の起電力が約0.4V以下になると夜間モードに切り替わるようである。さらにスイッチング方式の昇圧器を備え、Vf(順方向電圧降下)が3V位あるLEDを1.2Vの電池で駆動する機能を持っている。

 この回路を、秋月で売ってるキャンドル駆動IC(OSCDIC6441)を用いて次のように改造した。

IC2がキャンドル駆動用ICである。このICのVDDに2~5Vの電圧(LEDのVfより高い必要がある)を加えるとLED端子に接続したLEDの光をキャンドルのように揺らめかせる(明滅させる)ことができる。D1とC1は平滑回路で、IC1で作った駆動用電圧(パルス)を平滑化し直流にしてIC2に供給している。D1には順方向電圧降下の少ないショットキーダイオードを使うのが良いが私は手持ちの普通のシリコンダイオードを使った。回路のスイッチング周波数が数百KHzと高いのでC1には周波数特性の良い積層セラミックコンデンサを使った。

改造は、LEDを好きな色に交換し、基板のパターンを1か所カットし、3個の部品を取り付けるだけで済む。

この回路を組んで何色かのLEDを付けて比べてみた。次の動画で右端はオリジナルのソーラーライトで、それ以外は改造品(左から緑、蝋燭色、赤、青)である。

赤色のLEDが思いのほか暗い。これは使った赤色LEDの光量が少ないためだと考えられる。その対策として赤色LEDを2個直列にしたら次の動画のように少し明るくなった。赤色LEDは電圧降下(Vf)が少ないため2個直列でも光らせることができ、その場合でも消費電流は何故か増えなかった。

 

ライトの明るさはLEDの電流と発光効率に依存するので良く光るLEDを選んだほうが良い。緑のLEDは他と比べて明るいが、これはLEDのデータシートによると他に比べ光量が約3倍あるようである。またL1の値を変更することで電流を制御することができるが、電流を増やすと当然電池の「持ち」も悪くなる。YM805Fのマニュアルを探す事が出来なかったので代わりにYM805Aのマニュアルにある定数を見ると次の様になっている。

私の使ったLEDでは青と黄色が暗かったので、これらのL1を220μHに変更した(消費電流が2割ほど増加した)。

回路の消費電流の実測値は12mA程度であり内蔵のHiMH電池が表記通りの容量(100mAh)だとしてもフル充電で8時間しか持たず朝まで光らせる力はない。これを国産品の750mAhのものに交換して一晩持つようにする事ができた。

 とりあえず8個ほど作ってベランダの物干しに吊るしてみた。

LEDには指向性があり下向きに取り付けているため(使ったLEDの半値幅は60度~70度)光が出来るだけ水平方向に拡散するようランタンの中に縮れさせたアルミホイルを丸めて入れている。

なお秋月ではLEDに被せるキャップを扱っているので、(好みによっては)それを使って光を拡散させるのも良いだろう。 

キャンドル駆動用IC OSCDIC6441(IC2)の入力電圧の絶対定格は5.5Vであるが、LEDが消灯している瞬間はこれを超えピークで7~8Vになる。(実際、制作の途中で何個かOSCDIC6441を壊した)IC2を壊したくない場合はC1と並列にLEDのVfより少し高い電圧(色にもよるが概ね3.6V程度)のツェナーダイオードを入れると良い。

また何らかの要因でLEDがほとんどチラつかない場合がある。とくに悪天などで充電不足となり電池が消耗して電圧が下がった場合に顕著のようである。これはC1と並列に100uF程度の電解コンデンサを入れて直流を安定化させると改善されるようだ。

これらの修正を加えた回路は次のようになる。


この図ではD2の位置が上に述べた場所と違うが、同じ効果が得られ、またこの方がIC1の過電圧保護にもなるだろう。ただ、C2を入れることでピーク電圧が抑えられ電圧が安定するのでD2は必ずしも必要ないようだ。

【不具合】色々テストしている間にキャンドル駆動用IC OSCDIC6441には次のような不具合がある事が分かった。即ちVDD端子に10mV程度の電圧を加えた後その電圧を上昇させてもLED端子に接続されたLEDは光らない。この現象で一見OSCDIC6441が壊れたように見えるが電圧をかけずに放っておくと復活している。ソーラーライトでこの不具合が発現するのは電源SWがOFFの状態で太陽電池に弱い光が当たってる場合や曇り続きでNiHM電池が消耗した時である。

これを復活させるには、
(1)もし電池が消耗している場合はスイッチをONして数時間太陽光に当て、NiHM電池を充電する。
(2)その後太陽電池を覆った状態でスイッチをOFFにしてそのまま暫く放置しておき、その後太陽電池を覆った状態で電源をONにする。

復活するまで(2)を繰り返す。
別の方法としてOSCDIC6441のVDD端子に(テスターの抵抗計などで)弱いマイナスの電圧をかけてやると直ぐ復活するがその為にはソーラーライトを一度分解する必要がある。

【その後】1年ほど使ってみたが、やはり防水がキチッとしておあらずいくつか問題が発生した。まず(1)ソーラセルの周囲から雨水が侵入してソーラーセルの電極辺りが腐食したものが出てきた。防水するために一度ソーラーセルを取り外したいが接着されていて力を入れたら割ってしまって諦めた。仕方ないのでソーラーセルの周囲を紫外線硬化樹脂で埋めてみた。(2)電源スイッチが錆びてきた。これは CRC 2-26 をスプレーするくらいしか対応はない。(3)LEDを出っ張って取り付けていたがLEDの付け根がU字に凹んでいてここに水が溜まり電極の付け根を腐食させた。これもLEDの付け根を紫外線硬化樹脂で埋めるとともに、基板からあまり突出させないよう取り付け直し、ケースとLEDの隙間も紫外線硬化樹脂で埋めた。