2022年10月8日土曜日

ソーラーライトその後(ソーラーライトを長持ちさせる技)


改造したソーラーライトを1年ほど使ってみて幾つかのトラブルや故障を経験したので、その実例と対策について以下に記す。なお実際に使った吊るソーラーラート、ソーラーアクセントライト、ソーラーガーデンライトに言及する場合はそれぞれHSL、SAL、SGLと略記する。

1,太陽電池の水対策

ソーラーライトを屋外で使うと何か所かから雨水が侵入し部品や電子回路を痛める。とくに太陽電池周りは、それを張り付けるためにコーキング剤が裏面の配線を通す穴付近に使ってある以外は全く対策されていないと言ってよい。ここに水が浸入すると太陽電池の電極を傷めたり(写真)電線を伝って電子回路に侵入する。太陽電池が劣化すると起電力が低下しニッケル水素(NiMH)電池の充電が不足するとともに夜と認識される時間が長くなる。また太陽電池の配線が腐食して切れたこともある。

これを防ぐには太陽電池の周囲を接着剤かコーキング剤で埋め雨水の侵入を防ぐ必要がある。私はUV硬化のレジン液(要するにネイルアートに被せて紫外線で硬化させる液体)で埋めた。

 

2,電源スイッチの水対策

電源スイッチも雨水の侵入口である。電源スイッチは下面にあるが物理的に塞げず、1年も風雨に晒されると接点などに錆が出始め動きも悪くなってくる。

私は時々CRC 2-26を吹き付けている。 電源スイッチだけでなく内部にある素子や金属にも湿気対策も必要だが、CRC 2-26はそれにも効果があることを期待する。

もし電源スイッチをON/OFFする事が無いのであれば 電源スイッチを取り外し穴を塞ぐのも1つのやり方である。


 3,LEDの電極の腐食対策

LEDの裏側の形状はフラットか少し凹んでおり、ここに水が溜まって電極を腐食することがある(写真)。

これを防ぐにはLEDの裏面をレジン液等を使って凸面にするとともにLEDをケース下面からあまり突出させないよう取り付けるか、またはLEDの周囲のケースとの隙間を接着剤等で固めて雨の侵入を防ぐ必要がある。次の写真はLEDの周囲をレジンで塞いでいる。また光を反射するようケースを銀色に塗装している。


 

4, ニッケル水素(NiMH)電池の過放電対策

 実際に使ってみたところでは3cm×3cm(9cm^2)の太陽電池を使っているSALやSGLでは真夏でも定常的に充電が不足しているようであり、個体差はあるが朝まで持たなかったり、特に曇りや雨の日が続くとほとんど光らなくなる事がある。それに比べ4cm×4cm(16cm^2)の太陽電池を使っている吊るソーラーライトは悪天が続かない限り朝まで比較的元気である。

実際にはSALやSGLはできるだけ長時間太陽光を当ててやるとともに、NiMH電池が弱ってきたら、過放電になる前に充電器で追充電してやると元気に復活する。 NiMH電池の充電器は千円以下でAmazon等で入手できる。

なお3種のソーラーライトに内蔵されている単4サイズのNiMH電池の容量には100mAh、200mAh、600mAhなどの種類がある。しかし容量が少ないと悪天が続いた場合に電池が過放電になってしまう。もし100mAhや200mAhの電池が入っていた場合にはもっと容量の大きい物と交換したほうが良い。

  〔※参考〕HSL、SALやSGLのLED点灯時の消費電流は11mA~12mA程度である。一方直射日光が当たる快晴の昼間(10月)にSALを太陽に正対させてNiMH電池の充電電流を計ってみたところ最大で23mA程度であった。太陽光の入射角は昼間を通じて変化するので近似的にsinθに従うと考えると平均充電電流は14mA(sinカーブの平均値は0.64なので)である。なお実際には太陽が出ていてもソーラセルの起電力が一定(概ね1.4V)以上ないと充電は始まらないが、その点は無視して計算しているので参考程度の値だと考えていただきたい。

一方ソーラーライトは通常太陽電池を真上に向けて設置するので太陽の高度角による影響が出る。南中時の高度角は夏至の関東ではで78度(sinθ=0.98)、冬至で31度(sinθ=0.52)程度であり、夏至での発電能力低下は些少であるが冬至には発電能力は約半分に低下する。実際には雲や悪天も影響してさらに悪化する場合もあり得る。

結局、夏至に平均14mAで充電できたとして昼間の長さが14時間あるとすると、これを充電するには196mAhの容量の充電池が必要である。これはLEDを夜通し光らせるには十分な電気量である。もっと太陽電池の面積の広いHSLではさらに大容量(300mAh以上)のNiMH電池が欲しい。一方冬至では平均11.5mAで9時間充電できるとしても充電量は103.5mAhしかなく、これは冬期の長い夜を通してLEDを光らせるには不十分であり、この問題はNiMH電池の容量を増やしても解決しない。気温の低い冬場の電池の充電効率の低下を考えると条件は更に悪い。この場合は回路の消費電流を減らす事を考える必要がある。

  5,ソーラーガーデンライトのハンガー(吊り下げ用部品)は弱い

ソーラーガーデンライトでは吊り下げるためのハンガーが柔らかめのプラスチック製(写真左)で強度が弱く、しばしば強風で落下し、時に太陽電池や電子回路、また外箱にダメージを与える。これを金属製に替える事で落下防止になる。

私は百均でジャンボ ゼムクリップ(70本入りが100円だった)を買ってペンチで曲げてハンガー作った(写真右)。

2022年10月7日金曜日

ソーラーアクセントライト キャンドル化用の基板を作る

 吊るソーラーラートに引き続いてソーラーアクセントライト改造用の基板を設計した。回路は以前書いたものと少し違って次のようにした。下図がKiCADで基板の設計に使った回路図である。

回路を変更した理由は前の回路ではソーラーセル(太陽電池)の出力に電源スイッチが介在しないため光が当たった状態では常に回路に電圧がかかっていたからである。この変更の弊害としてU2やLEDがハングアップしたときU2やLEDがリセットされずLEDが光らなくなる問題がある。これを回避するためR1を追加し、スイッチをOFFにした状態ではC2に溜まった電荷をR1を通じて放電させることとした。C2がフル(4.7V)に充電されている状態で電源スイッチをOFFにすると約15秒でC2の両端の電圧は10mVまで低下する。1分もOFFにしていたらハングアップは解消されるだろう。R1を流れる電流は0.2mA程度なのでLEDの光量にもほとんど影響はない。

次に基板の大きさであるが、元の基板の大きさが12mm×26mm程度でかなり小さく電池の下に隠れる部分もあるので部品を置ける場所が少ない。そこで基板を円形(直径35mm)にして面積を稼ぐことにした。但しプラスチックの土台の上には電池を支持するため2つの下駄(ポール、3mmΦ)が立っている。これを通すため基板には2つの穴を開けておく必要がある。

ソーラーアクセントライトでは電池が高い位置に配置されているのに伴い基板の上側には電池の下を除きスペースに余裕がある。 また電池の下に来る部分の上面には隙間が無いため部品を配置できないが下面には高さのない部品を配置できる。

CADの結果は次のようなものである。 2作目なのでKiCADにも少し慣れて基板の両面にシルクスクリーン印刷を入れることが出来た。

LEDは1個でも2個でも対応できるようにした。1個の場合は斜めのランドにに取り付けると良い。またキャンドル型のLEDや色がリアルタイムに変化するLEDなどでU2が不要な場合はU2の1-2番ピンにジャンパ-を入れる。

 この基板を20枚発注したところ$6.86で吊るソーラーライトより$1高くなった。

 

吊るソーラーライト キャンドル化用の基板を作る


 この1年で計50個以上の百均の100円ソーラーライトを改造してきたが、いちいち基板の配線を切ったり繋いだり、さらに部品を立体的に配線して改造するのも面倒なのでプリント基板作りに挑戦することとした。

プリント基板は若い頃(半世紀前)から作ってきた。銅面にマジックインクで書いたりサンハヤトで売っていたシールやテープを切り貼りしたりしてパターンを作り、それを塩化第二鉄溶液でエッチングして片面基盤を作ってきた。この方法でエレキーやニキシー管の周波数カウンタなど作った事がある。また大学では卒研で8ビットコンピュータ関係の両面基板(B5サイズ)を設計し手作業で配線パターンを作成、外注した経験がある。しかし今はCADの時代である。

CADには以前から興味があったが複数のCADソフトを使いこなすほど器用でもないので、どのCADが自分に合っていて習得すべきか決めかねたまま放って今に至る。最近何気なくYoutubeを見ていたらフリーソフトのKiCADで基板を作成・発注する動画が目に留まった。これなら爺(自分)にもできそうだ。そして基板を格安で発注できることも分かり、やる気が起きた。さらにKiCADの開発がCERN(欧州原子核研究機構)からサポートされている事も大きい(CERNは最初にWWWを開発したところとしても有名である)。

しかしこの手法をソーラーライトに適用するにはもう1つ問題がある。 これまでの改造では立体的に追加部品を配置したため追加部分を狭い場所に押し込むことが出来たが新たに基板を起こす場合、全ての部品を平面上に配置することとなり、これが可能かわからない。吊るソーラーライトに元々付いている基板の大きさは22mm×17mmであるが、電源スイッチ、取付用ネジ穴、LEDは決まった場所に配置する必要があるため、それ以外の部品を余白に配置する必要があるが、実際にはこの面積ではSMD(表面実装部品)でも使わない限り全ての部品を載せることはできない。そこでプラスチックの土台に載せることが可能な基板の大きさを調べると22mm×25mmまでは拡大しても大丈夫であることが分かった(次の写真の橙線)。

組み込む回路は以前に作ったそのままである。最初にKiCADの回路図エディタで配線図にする必要がある。このとき一般的な部品のシンボルはあらかじめ用意されているがライブラリに無い部品のシンボルはシンボルエディタを使って自分で作る必要があった。そのとき、後で行うエレクトリカルチェックに必要な信号線の属性の定義が面倒であった。VDDが電源入力なのは間違いないがGNDは何だ?あと太陽電池からの入力SOLは電源なのか?信号なのか?


 最終的にはエレクトリカルチェックで合格するようトライ&エラーを繰り返し上図のように設定した。これを使って出来上がった回路図は次の通り。なおキャンドル型のLEDや色がリアルタイムに変化するRGB-LEDなどでU2が不要な場合はU2の1-2番ピン間をジャンパ-する必要がある。

 回路図が出来上がると次にPCBエディタで基板の設計を行う。そのためには各部品のフットプリント(基板上を占める形)が必要である。

 一般的な部品のフットプリントはあらかじめ用意されている中から選べばよいが足りないものは他の部品を流用するかフットプリントエディタを使って自分で作る必要がある。例えば回路図のU2用には次のフットプリントを作成した。


フットプリントは多層のデータで構成されている。回路(表裏)、シルクスクリーン(表裏)、マスク(表裏)、マージン、エッジカット、等々であり画面上では色で識別する。

これはバグかも知れないがフットプリント作成時にマージン層に線(赤紫色)を引くとそこを越えて配線を通せなかった。本来は部品の配置上の問題(過接近や重なり)を検出し警告を発する機能のはずなので随分悩んだが、結論として次図の様にマージン層は使わない様変更して思った通りの配線を引けるようになった。なお外形を丸から長方形に変更したのは実装の方法を変更したからで上記問題とは関係ない。

 〔後で分かった事だが部品の配置上の問題を検出するのにマージン層を使ったのは間違いで、その目的にはコートヤード層を使うべきであった〕

配線図の各シンボルに対応した実際の部品のフットプリントはその部品の置き方によって変わるため、部品ごとに必要に応じて複数のフットプリントを用意し、各シンボルとどのフットプリントを対応させるか指示する必要がある。今回は次のような対応にした。

ここでまで来てPCBエディタによるプリント基板の設計に移るが、今回のように基板の物理的要件が決まっている場合は先ずそれを設定する。今回は先ず基板の大きさを設定し、次に電源スイッチ、取付用ネジ穴、LEDを決まった場所に配置した。次に残りの部品を基板内にうまく配置できるかを試した。(SMDは使わないので)部品の配置には平面だけでなく空間、特に高さを考慮する必要がある。というのは隙間が基板の下側に6mm、上側にも同程度しかないからであって、場所によってはもっと狭くなる。とくに高さのある電解コンデンサなどは基板の外に横置きにする検討が必要である。

PCBエディタを起動すると最初は部品が一塊になって隅に置かれている。それを手作業で基板上に配置しなおし結線する。部品間に必要な結線は配線図を元に予め直線で結ばれているので、それを元に実際の基板上の線に落とし込んでゆく。この過程は文字で説明するより動画で見たほうが分かり易いのでYoutubeなどを参考にして欲しい。 また別のソフト(freeroute等)を使って自動配線させ、をれを手作業で修正・調整することもできる。

一通り配線を終えるとデザインルールチェッカーによって問題点を洗い出す。デザインルールチェッカーは配線が回路図通りに結線されているか、線間の間隔は妥当か、部品が重なって配置されていないか等をチェックするほか基板の製作上の問題をチェックしエラーや警告を出してくれる。その時、初めは分かりにくく手こずったエラーは配線の1mm以下の短い断片が残って取れない(部品の裏に隠れて場所が分からない)事である。これは部品をアウトラインモードにして透かして見ると発見しやすい。

デザインルールチェッカーで問題が無くなればガーバーファイルおよびドリルファイル、ドリルマップファイルを出力して基板の設計が出来上がり発注できる状態になる。

そして実際に発注した。基板の厚さはやレジストの色は選べる(選択内容で価格が変わる場合がある)ので、基板の厚さ1mm、レジストの色は標準的な緑を選択した。料金は20枚で5.86ドルである。安い!このほか送料が着払いで600円程必要である(製作に1~2日、送付に6~8日程度かかる)。

しかし残念な事にこの設計では大きなミスを犯していた。この図では表から見たようにCADは設計しているが、上の写真に従って私は裏から見たつもりで作業をしていた。つまり表裏が逆になっているのである。幸いな事にこの回路で使う部品は裏返しても問題はない、つまりシルクスクリーンの印刷されていない裏面に部品を取り付けても問題は生じないので実害はない。あるいはこのシルクスクリーンの通りに部品を付けて基板を裏返しに取り付ける手もあるが、その場合電源スイッチのON/OFFが表示と逆になる。

初めてCADを使ったので理解が足りてない分ミスは仕方がないが、リカバーできるので良しとしよう。