2022年10月7日金曜日

吊るソーラーライト キャンドル化用の基板を作る


 この1年で計50個以上の百均の100円ソーラーライトを改造してきたが、いちいち基板の配線を切ったり繋いだり、さらに部品を立体的に配線して改造するのも面倒なのでプリント基板作りに挑戦することとした。

プリント基板は若い頃(半世紀前)から作ってきた。銅面にマジックインクで書いたりサンハヤトで売っていたシールやテープを切り貼りしたりしてパターンを作り、それを塩化第二鉄溶液でエッチングして片面基盤を作ってきた。この方法でエレキーやニキシー管の周波数カウンタなど作った事がある。また大学では卒研で8ビットコンピュータ関係の両面基板(B5サイズ)を設計し手作業で配線パターンを作成、外注した経験がある。しかし今はCADの時代である。

CADには以前から興味があったが複数のCADソフトを使いこなすほど器用でもないので、どのCADが自分に合っていて習得すべきか決めかねたまま放って今に至る。最近何気なくYoutubeを見ていたらフリーソフトのKiCADで基板を作成・発注する動画が目に留まった。これなら爺(自分)にもできそうだ。そして基板を格安で発注できることも分かり、やる気が起きた。さらにKiCADの開発がCERN(欧州原子核研究機構)からサポートされている事も大きい(CERNは最初にWWWを開発したところとしても有名である)。

しかしこの手法をソーラーライトに適用するにはもう1つ問題がある。 これまでの改造では立体的に追加部品を配置したため追加部分を狭い場所に押し込むことが出来たが新たに基板を起こす場合、全ての部品を平面上に配置することとなり、これが可能かわからない。吊るソーラーライトに元々付いている基板の大きさは22mm×17mmであるが、電源スイッチ、取付用ネジ穴、LEDは決まった場所に配置する必要があるため、それ以外の部品を余白に配置する必要があるが、実際にはこの面積ではSMD(表面実装部品)でも使わない限り全ての部品を載せることはできない。そこでプラスチックの土台に載せることが可能な基板の大きさを調べると22mm×25mmまでは拡大しても大丈夫であることが分かった(次の写真の橙線)。

組み込む回路は以前に作ったそのままである。最初にKiCADの回路図エディタで配線図にする必要がある。このとき一般的な部品のシンボルはあらかじめ用意されているがライブラリに無い部品のシンボルはシンボルエディタを使って自分で作る必要があった。そのとき、後で行うエレクトリカルチェックに必要な信号線の属性の定義が面倒であった。VDDが電源入力なのは間違いないがGNDは何だ?あと太陽電池からの入力SOLは電源なのか?信号なのか?


 最終的にはエレクトリカルチェックで合格するようトライ&エラーを繰り返し上図のように設定した。これを使って出来上がった回路図は次の通り。なおキャンドル型のLEDや色がリアルタイムに変化するRGB-LEDなどでU2が不要な場合はU2の1-2番ピン間をジャンパ-する必要がある。

 回路図が出来上がると次にPCBエディタで基板の設計を行う。そのためには各部品のフットプリント(基板上を占める形)が必要である。

 一般的な部品のフットプリントはあらかじめ用意されている中から選べばよいが足りないものは他の部品を流用するかフットプリントエディタを使って自分で作る必要がある。例えば回路図のU2用には次のフットプリントを作成した。


フットプリントは多層のデータで構成されている。回路(表裏)、シルクスクリーン(表裏)、マスク(表裏)、マージン、エッジカット、等々であり画面上では色で識別する。

これはバグかも知れないがフットプリント作成時にマージン層に線(赤紫色)を引くとそこを越えて配線を通せなかった。本来は部品の配置上の問題(過接近や重なり)を検出し警告を発する機能のはずなので随分悩んだが、結論として次図の様にマージン層は使わない様変更して思った通りの配線を引けるようになった。なお外形を丸から長方形に変更したのは実装の方法を変更したからで上記問題とは関係ない。

 〔後で分かった事だが部品の配置上の問題を検出するのにマージン層を使ったのは間違いで、その目的にはコートヤード層を使うべきであった〕

配線図の各シンボルに対応した実際の部品のフットプリントはその部品の置き方によって変わるため、部品ごとに必要に応じて複数のフットプリントを用意し、各シンボルとどのフットプリントを対応させるか指示する必要がある。今回は次のような対応にした。

ここでまで来てPCBエディタによるプリント基板の設計に移るが、今回のように基板の物理的要件が決まっている場合は先ずそれを設定する。今回は先ず基板の大きさを設定し、次に電源スイッチ、取付用ネジ穴、LEDを決まった場所に配置した。次に残りの部品を基板内にうまく配置できるかを試した。(SMDは使わないので)部品の配置には平面だけでなく空間、特に高さを考慮する必要がある。というのは隙間が基板の下側に6mm、上側にも同程度しかないからであって、場所によってはもっと狭くなる。とくに高さのある電解コンデンサなどは基板の外に横置きにする検討が必要である。

PCBエディタを起動すると最初は部品が一塊になって隅に置かれている。それを手作業で基板上に配置しなおし結線する。部品間に必要な結線は配線図を元に予め直線で結ばれているので、それを元に実際の基板上の線に落とし込んでゆく。この過程は文字で説明するより動画で見たほうが分かり易いのでYoutubeなどを参考にして欲しい。 また別のソフト(freeroute等)を使って自動配線させ、をれを手作業で修正・調整することもできる。

一通り配線を終えるとデザインルールチェッカーによって問題点を洗い出す。デザインルールチェッカーは配線が回路図通りに結線されているか、線間の間隔は妥当か、部品が重なって配置されていないか等をチェックするほか基板の製作上の問題をチェックしエラーや警告を出してくれる。その時、初めは分かりにくく手こずったエラーは配線の1mm以下の短い断片が残って取れない(部品の裏に隠れて場所が分からない)事である。これは部品をアウトラインモードにして透かして見ると発見しやすい。

デザインルールチェッカーで問題が無くなればガーバーファイルおよびドリルファイル、ドリルマップファイルを出力して基板の設計が出来上がり発注できる状態になる。

そして実際に発注した。基板の厚さはやレジストの色は選べる(選択内容で価格が変わる場合がある)ので、基板の厚さ1mm、レジストの色は標準的な緑を選択した。料金は20枚で5.86ドルである。安い!このほか送料が着払いで600円程必要である(製作に1~2日、送付に6~8日程度かかる)。

しかし残念な事にこの設計では大きなミスを犯していた。この図では表から見たようにCADは設計しているが、上の写真に従って私は裏から見たつもりで作業をしていた。つまり表裏が逆になっているのである。幸いな事にこの回路で使う部品は裏返しても問題はない、つまりシルクスクリーンの印刷されていない裏面に部品を取り付けても問題は生じないので実害はない。あるいはこのシルクスクリーンの通りに部品を付けて基板を裏返しに取り付ける手もあるが、その場合電源スイッチのON/OFFが表示と逆になる。

初めてCADを使ったので理解が足りてない分ミスは仕方がないが、リカバーできるので良しとしよう。

 発注して8日目に基板が届いた。

実際に部品を挿し組み立ててみると物理的に少し修正が必要な所はあるが、機能に問題が無いことを確認できた。

 

とりあえず最初の作品は上手く行ったようだ。


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