2024年6月21日金曜日

出入り検知器をPCB化する(その6)

発注後1週間と1日で JLCPCB から3作目の基板が届いた。指定した最も安い配送方法 OCS NEP のうちOCS は ANA グループの会社名らしい。一方 NEP というサービスが何なのかはよく分からなかったが国内はネコポスでは配達された。毎度使って何も問題は無いので良しとしよう。

早速組み立ててデバッグ中のソフトを書き込んだ。

新しい部品を基板に押し込む面積を稼ぐためPIC(18F27Q43)のピンの割り当てを変更したが、それに伴うバグの侵入が幾つかあり、虫取りが進行中である。

 今回は音声合成ICにこれまでのATP3011ではなくATP3012を使った(半田ジャンパーを切り替えることで双方に対応するよう設計している)。しかしATP3012は上手く動かない。仕方がなくATP3011に戻すと問題なく動く。そこでテスト環境を作ってATP3012を単体でテストしたが特に問題ないようだ。怪しいのは16MHzのセラロックか?オシロスコープでセラロックを観測するとSLEEP状態では発振停止しておりSLEEPが解除されて発振が安定するまで1ms程度かかる事が分かった。即ちSLEEP解除後に数msの遅延を入れる事で問題は解決した。

 ここまで来て、一応前バージョンと同じ機能まで確認できたので、これから新しく追加したEEPROMを使ったソフトを開発する。

余談だが、半田ジャンパーが上手く繋がらなかったので半田ごての温度を270℃から260℃に変更したら簡単に繋がった。


10℃の差がハンダの粘性に大きく影響しているようだ。この半田ごて(PX-280)はなかなか優れものである。値段は高いが思い切って買ってよかった。

(その7へ続く)


2024年6月12日水曜日

出入り検知器をPCB化する(その5)

 ここで改めて何を作っているか要求項目を列挙すると、

  1. 人の出入りを検知して声でメッセージ(いらっしゃいませ、ありがとうございました、等)を出す。
  2. 電池で稼働できること(低消費電流)
  3. 専門知識が無くても使える事
  4. 気圧の変化を感じて何かのメッセージを喋る。
  5. 4.を処理するため時計が必要。
  6. 5. の機能を使って時刻に対応したメッセージを喋る。 
  7. 外部制御端子(発声時にONするなど)
  8. 電源電圧の監視と警告機能

といった ところであるが、これに付随して次のような機能を追加した。

  •  時刻、気圧(補正値)の設定
  •  喋る内容を設置環境に応じて変える(家庭用、店舗用など)。
  •  時刻、曜日を指定して喋る機能(毎日、週末、週末以外)
  • 定期的に時刻と気圧、気圧変化傾向を喋る機能
  •  夜間モード(夜間は発声抑止、LEDを暗くする、など)
  •  LEDの明るさを設定する機能
  •  

また次のような機能も実装を予定している

  •  時には声ではなくメロディを流す。

 これらを実現するため、コア部分には低消費電力のPICを使うが、PICに足りない機能は別途実装する。精密時計、気圧計、EEPROMなどである。

 これらのうち大部分はこれまで説明した内容であるが、LEDの明るさを制御するにはPWM(パルス幅変調)を使いデューティ比を変化させる。CLC(プログラム可能なロジックセル)を使ってこれとLEDのON信号とのANDをとったものをLEDに与える。この理屈は簡単であるが実際にこれをPICの機能を組み合わせて実現するには面倒臭いプログラミングが必要である。PIC18F27Q43には8つのCLCを内蔵するがそのうち4つをLED制御に使った。また3つ内蔵するPWM(パルス幅変調器)のうち2つを使って、1つを明るさの調整に、他をLEDのブリンク(点滅)に使った。

CLCを使う上での第一の関門はInput Data Selection on Gates である。ここではPIC内部の数十ある信号の中から4つ、及びその反転信号を選択して取り出すことが出来(つまり8つの入力信号ができる)、4つの出力はそれぞれ8つの入力信号の中から任意の信号を選んでORをとりその正論理又は負論理を取り出すことが出来る。つまりNAND、OR、それにロジック1の何れか及びその反転出力(AND,NOR,0)を実現できる。この出力が上図のkxg1~4である。

次にLogic Functionではあらかじめ設定された4入力の8つの回路(機能)のうちの1つを選択できる。そのうち4-AND、AND-OR、OR-XORを使った。それぞれ負論理で使うと4-OR、OR-AND、AND-XORとして機能させることもできる。次図は8つの機能の内の最初の4つである。

これらを使って赤LEDは次の様に点灯させている(図は分かり易いよう簡略化している)。

このなかのXOR(OR-XORを除く)の2つの入力は等価ではなく上が何らかの信号入力、下がソフトウェアでセットするビットである。即ち輝度はCLC2でBrightnessのPWMとANDを取っているが、警告信号は赤の連続点灯、電圧低下は赤のブリンクで示し、警告と電圧低下が重なった場合にはブリンクの明と暗の時間比を逆転させている。ここで信号名の前の「/」は負論理を表す。

(その6へ続く)

2024年6月10日月曜日

出入り検知器をPCB化する(その4)

 その3に引き続き次のバージョンに向けた開発を進めている。SPIインターフェイスをUARTやI2Cインターフェイスに変更するため、基板を少し手改造した。具体的にはボイスシンセサイザはUART接続に、気圧計、時計、それに新たに追加するEEPROMはI2Cインターフェイス接続に変更した。

 また音階を出したいという要望があるので送信部と同じ8ピンのPIC16F18313を使いUARTで通信する事を前提に回路を設計した。音階はICを追加しないでPIC18F27Q43自体でも対応できると思うが割り込みを使っている関係上不規則に音にブツブツとノイズが入りそうなのでとりあえず安全策をとった。I2Cインターフェイスのデバッグでは安価(\1.5K程度)な中華製ロジックアナライザが活躍した。これはPulseViewというフリーソフトを使うと単にデジタル信号を見せるだけでなくプロトコルの解析もできるので非常に便利で有効であった。次図は気圧センサー(LPS-25HB)の0x0F番目のレジスタにあるwho am i 値(0xBD)を読み出しているところ。

 I2Cインターフェイスで一番の問題だったのは時々クロックがローレベル(スレーブからの応答待ち)になったままハングアップする事である。一度ハングアップするとソフトの再起動では解決せず(I2Cデバイスにはリセット端子も無いため)一度電源を落とすしかない。 この点はスレーブからの応答待ちのないSPIが優れており、これに戻す事も検討した。そんな中でEEPROMの説明の中にソフト的にI2Cをリセットする方法が書かれていたのでこれを実装した(下図)。EEPROMはきちっとリセットしておかないと(内部状態が中途半端な時にコマンドを送ると)不正な書き込みが起こる事があるらしい。これでハングアップの問題が解決したのか分からないが必要な機能だろう。

 I2Cインターフェイスのデバッグが済んだ所でKiCADで3世代目のPCBの設計を始めたが、色気を出して最新の KiCAD 8.0 をインストールしたのが運の尽き。バージョン7.0で使っていたフットプリントの一部が使えなくなってしまった。が、いろいろ弄っているうちに何とか使えるようにできた。理由は不明。

 これを使って新しい基板を設計した。基板のサイズは前と同じである。

 前バージョンよりICが2個増えているのでこれらを詰め込めるか心配し、PICのピンの割り当てを配線がしやすいように変更したが実際にパターンを作ってみたらまだ面積に余裕があるようである。いざとなったら表面実装部品を裏面に配置する裏技もある。

 ボイスシンセサイザICにはこれまでATP3011を使っていたが、知らずに(ATP3011だと思って)ATP3012を買い、音が出なくて色々調べているうちにATP3012である事を知った。同時に両者が一部ピンコンパチブルではない事、またATP3012はサンプリング周波数が高く音質が良い事、外付けの発振子(セラミック発振子)が必要な事を知り、新しい基板は両者に対応できるよう設計しなおした(切り替え用のはんだジャンパーは基板裏面に配置した)。

 (その5へ続く)