2024年7月31日水曜日

出入り検知器をPCB化する(その11)

メロディ生成をPIC16F18326に変えたので、それに合わせて第4版のPCBを発注した。版を追うごとに基板の密度が上がっている。秋月で買える安い部品だけで作っているのでICのパッケージも様々である。これまでと同じ大きさの基板に収めるのはボチボチ限界かな。

1週間ほどで基板が出来上がってきたので早速秋月に走り部品を調達して組み立てた。

ソフトに幾つかの修正を加えてメロディIC(PIC16F18326)を接続できた。

RS-Kager2 Ver0.23 for RH-Kager2 Rev 0.40 2024/07/30-1
 StateMachine: 3.1 SpeakMessage: 0.4
 Copyright(C)2023,2024 by MYcrosLip. (DEBUG MODE)
... Checking Melody Player - Tone326-197:103
--- Melody Player is ready.

... Checking Voice Synthesizer -VF1a
--- Voice Synthesizer is ready.
--- I2C_INIT: I2C Bus is Ready.
--- Extend EEPROM OK.
... EEPROM-ID = RS-Kager2 Ver0.23 2024/07/30-1
... RTC RAW10: 02 80 08 22 23 09 31 03  07 24
--- RTC is active.
--- RTC: 24/07/31(WED) 09:23:22
--- Barom is active.
!!! Barom: FIFO is not full; Wait a dozen seconds.
--- Air Pressure: 996.0 hPa (Offset 9.2 hPa).
--- Power Supply : 5.09 V
--- Environment : OFFICE mode.
--- Speak air pressure 1 time(s) in an hour.
--- Speak the time before speak the pressure is ON
--- Speak random at S3 is : ON
--- Speak Battery Low is ON.
--- Current LED Brightness is 30 %
--- Start Interrupt Handling.
 

メロディが時々ハングアップしたが、これは暫定的に作っていたインターフェイスの中の待ち行列(QUE)がCでお決まりのNULLポインタを起こしていた。複数の曲をキューイングして演奏する状況は考えられないのでQUEの使用は止め、逆に曲の途中で別の曲を強制的に割り込ませる機能を追加した。これにはメロディICとPIC18F27Q43の間の連携が必要であるが、メロディICに予め演奏の強制停止コマンドを組み込んでおいたおかげですんなりと実現できた。

(その後)

第4版のPCBに若干の修正を加えて第4.1版を作った。変更点はPICのバグ回避のための変更1件と利用上の都合に伴う2件である。

 出来ればこれを最終版にし、あとはソフトに任せたい。

 (続く)

 

2024年7月18日木曜日

出入り検知器をPCB化する(その10)メロディ生成4

 次はテンポの処理である。

単音の場合は適当に遅延を挟むことでメロディを演奏することが出来たが和音の場合は各音符の長さが同一ではないため単純な遅延では処理できない。 そこで32分音符の長さを基準とした割り込みとソフトのカウンタで処理する事とした。

実際にはスタッカートやテヌートも処理したいので音符の長さを12分割した間隔で割り込みをかけ発音を制御する。最高のレートだとBPM=200の場合は約3ms毎に割り込む事になる。

割込みにはTimer6(TMR2)を使った。250KHzのクロックをプリスケーラで16分周するとポストスケーラを使わなくても丁度良い具合になる。 BPM=40で244分周、BPM=200で49分周と、8ビットの分周器に丁度収まるスケールだ。

ここまで出来たら、あとは譜面の記法を決めればよい。TeraTermで操作できるよう譜面は全て文字で表記するようにした。前に書いたように音の高さはMIDIの音階と同じコードを使うがメモリーを節約するため16進数で表記する。音の長さは次の様にした。

音符は音の高さ2文字と長さ1文字の3文字で表す(休符は音階=0とする)。更にチャネル指定を「:c:」で、BPMを「%hh」、音階のオフセットを「$±h」で表す。1音を3文字で表すよう数値は16進標記とした。3文字の間にはスペースや幾つかの区切り記号を挿入することが出来る。

譜面は改行で終わる1行の文字列である。譜面を最後まで読み込んだら内部でチャネル(音源)ごとの楽譜に変換し、32分音符の1/12の時間間隔の割込みに従って同時進行で演奏(音をON/OFF)する。

次のような4和音の譜面を1オクターブ上げてBPM=100で演奏してみた(この譜面はプログラム中にデータとして記述して分かり易いよう改行を入れている部分であるが、実際は「"」や改行を外し1行にする必要がある)。

       "%64$+c"
    ":1:43E 41E 46E 48G 4dG 4aE_48G 4dG 4aE 46E 48E 43E 413"
    ":3:3EE 3cE 3eE 45E     45E_45E     46E 43E 43E 3cE 3c3"
    ":2:3aE 39E 3aE 3cE     41E_3cE     41E 3eE 40E 37E 393"
    ":4:37E 35E 37E 35E     32E_35E     3aE 37E 30E 34E 353"


 これを解釈し内部で使う音源ごとの楽譜に変換したものは次のようなものである(各音源の最初の16バイトの16進ダンプ)。

  --1-- 54 43 54 41 54 46 74 48  74 4d 54 4a 74 48 74 4d
  --2-- 54 3a 54 39 54 3a 54 3c  54 41 54 3c 54 41 54 3e
  --3-- 54 3e 54 3c 54 3e 54 45  54 45 54 45 54 46 54 43
  --4-- 54 37 54 35 54 37 54 35  54 32 54 35 54 3a 54 37

これを演奏するとこのような音になる。

(その後)

3連符を表現したくて割込み頻度を3倍にして、32分音符の間に3×12回割り込むようにした。これで音符の長さを表すパラメータが3倍となり3で割り切れるようになる。表記も改訂した。

この機能を使って3連符のあるこんな演奏ができる。我ながら上出来である。 

(さらにその後)

音源3,4はパルス幅変調ができるので、試してみた。パルス幅を50%、25%、12.5%、…と半分ずつにしていくと、50%~6.25%までは音質が変わり、それを超えると音量が低下する。これは主旋律を目立たせる技として使えそうである。

(さらにその後)

オシロスコープを使って割り込み処理にどの程度時間を取られているか観測してみたところ約2msかかっていた。一方200BPMの時32分音符に費やされる時間は約37ms。実際にはそれを12分割して管理していたが、さらに3連符処理のためその1/3倍としている。つまり割込み処理を1ms以下で終える必要がある。一方実際には処理にその倍の時間がかかっており100BPM以上の演奏には追従できない事が分かる。 これを解決するためCPUクロック(Fosc)を4倍に引き上げて4MHzとした。これで1回の割込み処理が500μs程度で終わり時間に余裕が生まれた(実際には36回(或いはその倍数)に1回起こる音符の切り替え処理時にもっと多くの時間がかかるが聞いていても分からない)。またクロックの変更に伴って影響を受けるUARTの通信速度や音の高さに関係するパラメータを変更した。幸いにも音符の高さを表すパラメータはクロックを細工する事で再計算せずに当初の音域をカバーする事が出来た。詳しくは後述する。

(つづく)



2024年7月16日火曜日

出入り検知器をPCB化する(その9)メロディ生成3

 4チャネルのミキサーを作る。

4chの発振器の出力をPIC外で抵抗ネットワークでも組んで合成すれば済むわけだが、ここではデジタル的に行えないか。4つの信号のXORを取れば済むと考えCLCを3つ組み合わせてミキサーを構成してみた。しかしサッパリ動かない。かなり長期間悩んだが問題はPIC16F18326のデータシートの次の図であった。

図を見てAND-XOR回路とみてプログラムを組んだ。即ち1番目と3番目を入力としてXORとして出力させるために2番目と4番目の空き入力をHとした。しかし図は間違いで、実際には図上の記述の通りOR-XOR回路で2番目と4番目の空き入力をLとしなければ動かなかった。細かい字を読みたくない老眼の弊害が現れた訳だ。

これを使ってCやCmの和音を発生させたが歪が酷くて聞くに堪えない。方形波は奇数倍の高調波を多く含むのでこうなるのか。偶数倍の高調波の多いのこぎり波だったらまだマシだったかもしれないが・・・。

それだったらと、4つの波形をデジタル・サンプリングして合成する事に挑戦した。実際には各波形は1か0かの2値波形だし、16F18326のD/A変換器は5ビット(32値)なので、この間をどうマッピングするかが課題になる。単純に各波形に 8の重みを付けて足し合わせたらよいのか。或いはエネルギーは振幅の2乗に比例するから32の2乗を4等分した平方根の重み付けで良いのか。サンプリング周波数(割り込み)を4KHzで試してみた。インストラクションサイクルが250k/sなのでサンプリング当たり62命令しか実行できない。実際に動かしてみると割込みは1.8K回/秒程度が限界でとても追いついていない。サンプリング周波数を1KHzに落とすと500Hzまで再現できるはずであるが、やってみても音にならない。Fosc/4を少なくとも4倍の1MHzくらいまで上げる必要がありそうで、そうするとNCO1の精度が悪くなるし、全体的なパラメータの見直し・変更が必要になる。

そこでパラメータの大幅変更を伴うデジタル・サンプリングは後回しとし、とりあえず14ピンソケットを8ピンソケットに重ね、4つの発振器の信号をピンに取り出して抵抗ネットワークを空中に組んで音を出してみたところ、素人の耳で聞いた限りではまぁ使えそうである。


先ずはこれで進める事とした。

(その10へ続く)

 

2024年7月12日金曜日

出入り検知器をPCB化する(その8)メロディ生成2

メモリー容量の関係でPIC16F18313では単音しか発生できなかった。これをPIC16F18326に換えることで機能拡大ができそうである。とりあえず基板を改造してPIC16F18326とオーディオアンプが使えるテスト環境を作った。

14ピンのPIC16F18326はPIC16F18313用に用意した8ピンソケットに一部だけ挿し、残りは宙ぶらりんの状態にしている。

和音を発生させるためには複数の発振器が必要であり、そのためにNCO1以外に使えそうなのがTMR0、TMR1、及びTMR2であるが、TMR1は任意の分周比の連続波形が発生できないので除外する。 

TMR0は次のような構成である。

クロックは幾つか選択できるが、後の計算の結果HFINTOSC(16MHz)を選択した。プリスケーラは1/2^n(n=0..15)が選択できる。中央のカウンタ部には8ビットモードと16ビットモードがあるが、8ビットモードでないと任意の分周比が設定できない。8ビットの分周器を経た後はポストスケーラで1/1~1/16の分周比を選択できる。最後にD-FFで1/2に分周し方形波として出力する。クロック周波数、プリスケーラ、分周器をどう組み合わせれば目的とする周波数を発生できるかExcelで最も誤差の少ない組み合わせを求めた。その結果全音階に渡って誤差を数Hz以内に収めることが出来た。

TMR2(Timer2、Timer4、Timer6)は次のような構成である。

この回路をそのまま音階発生に使うには次の欠点がある。

  1. 入力のクロックがFosc/4固定である事。
  2. 分周比の設定が8ビットしかできない事。
  3. 音階発生にはポストスケーラが使えない(信号が取り出せない)。
  4. そのままではPIPで出力を取り出せない。
  5. 発生周波数(分周比)によってduty比が変化する。

1,のFoscは1MHzとしており、これは他のデバイスのパラメータとの関係で安易に変更できない。従ってクロックは250KHz固定になる。4,5,を解決するため次の様にCCPと組み合わせてPWM(パルス幅変調器)として使う。duty比は他に合わせて50%とするが、これを変化させて音量・音質に変化を持たせることもできるだろう。

プリスケーラと8ビットの分周器を組み合わせると最低音の2音階を除いて予定した全ての音を発生させることが出来る事が分かった(ただし最高音部は周波数誤差が50Hz以上に大きくなる)。何処まで使えるかは実際に耳で聞いて決めるが最高音部は周波数が高すぎて現実的には使わないだろう。

音階のパラメータと誤差を纏めると次表のようになる(一部省略)。NCO1はこういう目的には優れものだという事が分かる。

TMR2はTimer2、Timer4、Timer6の3個搭載されているので、後述のミキシングを考えてTimer2、Timer4の2個を使い、NCO1とTMR0と併せて全体で4音を発生できるようにした。

Timer6は テンポの作成に使う。

(その9に続く)

2024年7月5日金曜日

出入り検知器をPCB化する(その7)メロディ生成

 メインの基板が働く目途が立ったのでメロディ回路作成に取り組んだ。前回のメイン基板の写真で空いている8ピンICソケットにPIC16F18313を挿してURATインターフェイスを通じてメロディを発生させるようにする。

3声のシンセサイザを作りたかったが試したらPIC16F18313の少ないメモリー(プログラム=3.5KB、データRAM=256B)では1声の単音色が限界だった。 音階はクロックの1MHzを使ってNCO1(数値制御発信器、次図)で発生させた。

一般的には特定の周波数を発生させるには高い周波数のクロックを分周器で分周するのが普通であるが、分周器は整数分の1の分周しかできない(PLLを使った高級な分周器では分数の分周が出来るものもあるらしい)。一方音楽に使うためには12音階を数オクターブを発生させる必要がある。12音階は整数比ではない(1音階の周波数比は2の12乗根=約1.060)ため分周で正確に発生させることはできない。特に分周器を使って高い周波数を出す場合は分周比が少なくなり周波数精度が悪くなる。音楽では単に周波数精度だけでなく正しい音階からの絶対的な周波数のずれが唸りとなって聞こえるのでこれはいただけない。分周で精度を上げるにはクロック周波数を上げ分周比も大きくする必要があるが、Excelで計算してみるとA8まで周波数誤差を0.5Hz以内に収めるためにはPICのクロックが32MHzでも足りない。

一方NCO1は動作がやや複雑である。中心となる加算器で加算値を足し合わせ、加算器のオーバーフローを出力とする。NCO1では周波数が高くなるほど周波数精度が高くなる。それもクロックが低いほど加算数が大きくなり周波数精度も高くなる。クロックが1MHz、20ビット加算器を使うとA1の55Hzを出すための加算値は115、A8の7040Hzを出すための加算値は14764である。実際には出力を方形波とするためにオーバーフローを2分周して出力しており、その時の加算値が上の値である。周波数誤差で見るとNCO1では音階毎の周波数誤差の凸凹が少なく、全音階で0.4Hz以下に収まっており、高音になるほど周波数誤差が大きくなりがちな分周方式と違ってNCO1方式は音楽向きである。

NCO1の弱点は求める周波数を出すための加算数の計算がやや面倒な事であるが、これは予めExcel等で計算しておくことで対処できる。

結局、PIC18F27Q43からUARTで音階と音の長さを纏めた1行を送ることでメロディを奏でさせることとした。音階はMIDIの音階コードを流用して16進数で表す。音の長さは簡略化して1文字で表す。例えばA4(440Hz)の四分音符は「455」と表現する。1音を3バイトで表すのでRAMのうち141バイトを使って47音(休符を含む)まで演奏できる。

音階はNCO1で簡単に実現できた。音の長さはメモリー容量の関係でタイマー割込みは使わず1msの遅延を必要回数繰り返すことで実現した。この繰り返し回数は拍数(BPM)から簡単に算出できる。ON/OFFの割合を変えることでスタッカートやレガートも出来る。一応次の様に文字を割り当てた。i や j や l を使っていないのは視覚的に判別しにくいからである。

一方、使い慣れたはずのUARTインターフェイスが全く使い物にならず苦労した。送信は出来るが受信が全くできない。ソフトやハードをあれやこれやチェックしても全く動かない。さんざん悩んだ挙句に最終的に2番ピン(RA5)が死んでいることが分かり、これをPPSの機能で空いている6番ピン(RA1)に振り替える事で解決した。この事は、PICを交換しても駄目だったのでロット不良か或いはまがい物を買った可能性がある(このPICは秋月で買ったんだけど・・・)。

UARTインターフェイスは AquesTalk pico と似たようなものにした。

次のバージョンでは和音を出したいのでPIC16F18313の上位互換のPIC16F18326(14ピン、プログラム=28KB,データRAM=2KB)、或いは別のPICを使ってできないかあれやこれや検討している。しかしPICに搭載されているNCOはせいぜい1個であり和音には程遠い。(複数個ある)タイマー1は使えないか?またPWMを使ってエンベロープ機能も搭載できないか?PWNはタイマー2と組み合わせる必要があり、タイマー2のクロックにはシステムクロック/4しか使えないが要求を満たせるか、また音の合成はどうするか?など検討している。

(その8へ続く)