2017年3月20日月曜日

IC-R6の周波数設定の怪1

以前、IC-R6で受信できる周波数は①5KHz(=25/5)、②6.25KHz(=25/4)、③8.33KHz(=25/3)、④9KHzの何れかの倍数である必要がある、と書いた。これはIC-R6の内部構造に由来しており、また基本的なチェーニングステップ(TS)でもある。
つまりIC-R6の受信周波数は内部では基本周波数(①~④の選択)×倍数として表現されている訳である。
そして、IC-R6のマニュアルによるとチューニングステップで③が選択出来るのはエアーバンドのみ、④が選択出来るのはBC(1M)バンドのみと書いてある。

まあ、そんなもんかとずっと考えていた。


今度、LT-R6を少し改造して、 ①~④の選択状況を表示出来るようにした(設定も可能)。そしてIC-R6を買ったときICOMでプリセットされていたデータを見てみた。

周波数欄の末尾の:0とか:3がこれである(0~3がそれぞれ①~④に対応している)。

 これをよく見ると、ここはエアバンドなんだけどBCバンド用の3(=④)が結構使われている。これってBCバンド専用じゃなかったっけ?ICOMさん。 他の周波数でも使えるの? 周囲の設定を見てもエアバンド用の2(=③)は全く使われてない。③って何なんだろうねぇ?

 前に書いたように、④を使わなくても全エアバンドを聞ける筈なんだけど、何故敢えて④を使っているのか?CS-R6がこう設定するの? PLLのロック時間は? 性能(スキャン速度)は落ちないの? 等々疑問は尽きない。


 ところで、 ①~④の基本周波数はどこから来ているのだろう? IC-R6の周波数は19.2MHzのTCXO(温度補償水晶発振器)を基準に生成するようになっている。MB15F63ULという周波数シンセサイザICがこれを担い、IC-R6の1st-Lo(第一局発)と2nd-Lo(第二局発)を発生している。3rd-Loは19.2MHzそのままである。


 近年のPLL技術は昔のそれよりかなり高度化しており、迂闊にもそれらをフォローできていなかった。 古典的なPLLの発信周波数は基準周波数÷m×nという式になる(mとnは整数)。このうち基準周波数÷mで基本周波数が決まり、そのn倍が発信周波数である。つまり基本周波数が周波数ステップであり、その整数倍を発振できる。これがInteger-N方式と呼ばれる従来からのPLLの考え方である。19.2MHzを3840で割ると5KHz、3072で割ると6.25KHz、2305で割ると8.33KHz、しかし9KHzになるmはない。でも6400で割ると3KHzになるのでその3倍で9KHzになる。これで理屈は合う。
 一方PLLは位相比較器からの出力を積分してフィードバックすることで発信周波数を決めるから、基本周波数が低いと積分時間を長く設定する必要がありPLLがロックするまで時間がかかる。従って5KHzステップで100ch/秒などのスキャン速度は実現出来ないだろう。

 近年のPLLはFractional-Nと呼ばれる方式が多く使われている。Fractionalとは分数を意味する。即ちnが分数でよいのである。従って周波数ステップと無関係に基本周波数を高く設定することができ、位相ノイズが低減できるとかロックが早いとかメリットが多い。近年のスペアナの分解能が格段に上がったのもFractional-N方式に寄る所が大きい。 IC-R6に使われているMB15F63ULはこのFractional-N方式の周波数シンセサイザである。

 MB15F63ULのカタログではPLLがロックする迄の時間は1msもかからない。IC-R6のスキャン速度は100ch/sだからチャネル当たり10ms。まだ余裕があるようである。





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