2025年12月5日金曜日

超音波距離計(その5)

 基本的な機能は実現できたので、次に実際の利用に合うようプログラミングを行う。基本的なロジックは、

  1. センサー部から200ms毎に送られてくる測距データを表示する。 
  2. 7セグメントLEDは測距データを3桁の数字で表示する。但し超音波センサーの最大探知距離が 400cmなのでそれより大きな値が来たときはエラーとみなし3桁ともマイナス(-)を表示する。
  3. RGB-LEDは距離に応じた色を表示する。また距離が短い場合は点滅表示を行う。これは7セグメントLEDを瞬間的に見た場合に読み間違いの可能性がある為だ。
  4. センサー部からのデータが途切れた場合は7セグメントLEDはドットを表示し、RGB-LEDは消灯する。

RGB-LEDは各色8ビットの諧調つまり24ビットの表示能力を持っている。 3,ではこれについて最初に距離に応じた連続的な色変化を試したが、そうすると逆に変化が認識しずらい。また輝度が高い場合の明るさの変化も認識しずらい。そこで距離に従って色を決める事にした。5つのLEDは同じ色を表示させる。具体的には100cm以上は青、100cm~40cmは緑、それより近い場合は赤を表示。各色の諧調は8程度で、距離が短いほど指数関数的に明るくなるようにした。さらに70cm以内では距離応じて点滅、距離が近いほど早く点滅するようにした。また緑は輝度が高いので値を約半分に抑えるようにしている。

4,ではタイマーを使って監視し、センサーからの信号が2秒以上来なかった場合に途切れたと判断している。





とりあえず当初の目標は達成したので、次はこれらを格納する箱探しを行う。

(終り) 


 



2025年12月2日火曜日

超音波距離計(その4)

 

 RGB-LED(PL-9823)は次のような特殊なPWMパルスを作って駆動する必要がある。このデータは信号が0→1になる所からスタートし、全てのビットを送り終える最後のビットの最後は0→1で終了する。であるなら全てのデータを送った後のアイドルの状態は0なのか1なのか? スタートの条件を考えれば0であるが図からは最後は1で終わるように見える。たぶん最後は0を延長したRETコードをアイドル状態として使うのだろうと推測する。

このパルスの厳密なタイミングには幾つかの情報があり曖昧であるが次の情報が確からしい。実際には動かして確かめる必要があるがHとLが概ね1:3あるいは3:1の比率であれば成立しそうだ。

またビットの並びはMSBファーストで、次の様にRGBの順だという資料もあるがGRBという資料もあり、これも実機で確かめる必要がある。

RGB-LEDはカスケード接続で複数を制御できる優れものである。今回はこれを5個を使う。

データの転送時間は上のタイミングから1ビット当たり1.25μsかかり(転送レート800Kbps相当)、1つのLEDに30us、5個のLEDを合わせると150μsかかる。

この信号をどうやって生成するかであるが、NOP命令を挿入してタイミングを取るソフト的な方法と、ハードロジックで信号を作成する方法が考えられる。MicrochipのアプリケーションノートAN1606にはPIC16F1509のCCPを使ってWS2811を駆動する例が示されており、これが参考になりそうである。しかし何れも時間的にかなりシビアで先人の例でも涙ぐましい苦労の跡が見える。特に回路の遅延などに伴うヒゲの発生には十分注意する必要がある。開発にはロジックアナライザを活用する必要があろう。

 ソフト的にやるのは後回しとして、とりあえずハードロジックを検討してみる。PL-9823はAN1606で示されたWS2811とは必要とする波形が違うので、それに合わせる必要がある。

信号の基本はSPIの出力である。PL-9823ではSPIの1つの出力ビットを4つに分けて1:3(0 code)又は3:1(1 code)の比率のPWMパルスを生成すれば仕様に合う。SPI出力が800Kbpsなら800KHzと1.6MHzの方形波があれば合成できる。SPIを駆動するクロックはFosc/4を分周したものであるため、3.2MHzの2^n倍のFoscが必要であるが一方PIC単体で発生できるクロックは限られており最も近い値として12MHzを4分周してFosc=3MHzとして使うのが適当だろう。ということで転送レート 750Kbps(=3MHz/4)で検討したい。

 AN1606に準じて考えると、SPIの出力(SDO)、SPIのクロック(SCK)、それにSCKの元となるクロックFosc/2から合成できそうだ。Fosc/2はCLKRを使ってFoscを2分周して生成した。

0 code = /SDO & SCK & Fosc/2

1 code = /(/SDO + /SCK + /Fosc/2)  

 PWMパルス = 0 code + 1 code

 この式で & は論理積、+ は論理和、語頭の/ は否定を表す。

この式ならCLKRとCLC各1個で実現できそうである。ということでこれを実際やってみたところ、SPIで送信するバイトの最後のビット(lsb)がSDOではアイドル状態まで引きの伸ばされるためlsbが1だとアイドル状態でもFosc/2がPWMパルスとして出力されAN1606のように上手くは行かない。強制的にlsbを0として7ビットのデータとするなら上手く行きそうだが。そこで悩んだ末に何とか窓信号を作り論理積をとる事とした。

具体的にはもう一個のCLCを使ってSCKをFosc/2の立下りでサンプリングすることで25%遅らせたSCK2を作り、SCKとSCK2の論理和を窓信号とする。つまり、 

     1 code = SDO & ( SCK + SCK2 ) 

 とする。これで上手く行きそうだ。そして、次の通り上手く光ってくれた。

実際に出来た波形を観測すると、 SPIの出力は1バイト(8ビット)送出した後次のバイトを送出までに隙間が出来る。つまりSPIではバイトを跨ぐ連続送信は出来ずバイト間では T0L や T1L が長く引き延ばされている状態になる。この隙間の大きさの規程は無いがRETコード、つまり(確かめた訳ではないが)50usを超えなければ問題ないようである。

 ここまでで基本的な機能は実現できたので、あとは受信した測距データをもとに表示内容を決めていきたい。

参考までにPWMパルスを作成するためのCLKR、SPI1、CLC1、CLC2の初期設定部分は次の様にした。

    //
    // CLKR Fosc(3MHz) to 1.5MHz
    //
    CLKRCONbits.CLKRDC  = 2;        // Duty is 50%
    CLKRCONbits.CLKRDIV = 1;        // divide by 2
    CLKRCONbits.CLKREN  = 1;
    //
    // SPI1
    //
    SSP1CON1            = 0x0;      // clear SSPEN
    SSP1CON1bits.CKP    = 0;        // IDLE Clock is Low
    SSP1CON1bits.SSPM   = 0x0;      // SPI with Clock = Fosc/4
    SSP1STATbits.CKE    = 0;        // trans. at clk idl->actv 
    PIR1bits.SSP1IF     = 0;        //        
    SSP1CON1bits.SSPEN  = 1;
    //
    // CLC1
    //
    CLC1CONbits.LC1MODE = 0;        // AND-OR
    CLC1SEL0            = 0x13;     //1 SPI1 SDO
    CLC1SEL1            = 0x12;     //2 SPI1 SCK
    CLC1SEL2            = 0x0B;     //3 CLKR = Fosc/2
    CLC1SEL3            = 0x05;     //4 CLC2 = SCK2
    CLC1GLS0            = 0x16;     // 0 code = /SDO & Fosc/2
    CLC1GLS1            = 0;        // T
    CLC1GLS2            = 0x02;     // 1 code = SDO
    CLC1GLS3            = 0x88;     //          &  /(/CSK & /SCK2 )  
    CLC1POL             = 0x03;
    CLC1CONbits.EN      = 1;
    //
    // CLC2 - MAKE DELAYED SCK
    //
    CLC2CONbits.LC2MODE = 4;        // 1 input D-ff with S & R
    CLC2SEL0            = 0x12;     //1 SPI1 SCK
    CLC2SEL1            = 0x0B;     //2 CLKR = Fosc/2
    CLC2SEL2            = 0;
    CLC2SEL3            = 0;
    CLC2GLS0            = 0x4;      // CK: /SEL1 = /Fosc/2
    CLC2GLS1            = 0x2;      // D:  SEL0 = SCK
    CLC2GLS2            = 0;        // R: F
    CLC2GLS3            = 0;        // S: F
    CLC2POL             = 0x00;
    CLC2CONbits.EN      = 1;
 

SPIは同時双方向通信という特徴があり、送信のみや受信のみという動作は無い。通常のシリアルインターフェイスの送信だと送信バッファーが空になるのを待って送信バッファーにデータを書き込むが、SPIでは送受のバッファーが共通になっており、送受信が完了したというフラグしかない。従ってSPI(マスターモード)でデータを送信する場には先ずバッファーに送信データを書き込み、送受信完了のフラグを待って次のデータを書き込むというプログラミングをする必要がある(受信の動作はダミーとなる)。このとき送受信完了のフラグは自動的にクリヤーされないのでソフトでクリヤーする必要がある。具体的に5個のLEDにデータを送るのは次の様にした。なお割込みが起きる事でタイミングが狂わないようこの部分は割り込み禁止としている。

void rgbSetLeds(byte *clr_r, byte *clr_g, byte *clr_b){
    byte GIEBitValue = INTCONbits.GIE;
    INTCONbits.GIE   = OFF;          // di()-----------------              for(byte i=0; i<5; i++){
        PIR1bits.SSP1IF = 0;
        SSP1BUF     = *clr_r++;     
        while(PIR1bits.SSP1IF==0){} PIR1bits.SSP1IF = 0;
        SSP1BUF     = *clr_g++;     
        while(PIR1bits.SSP1IF==0){} PIR1bits.SSP1IF = 0;
        SSP1BUF     = *clr_b++;     
        while(PIR1bits.SSP1IF==0){}
    }
    INTCONbits.GIE = GIEBitValue;    // ei()-----------------

}

これを誤って最初を、UARTの送信のように

        while(PIR1bits.SSP1IF==0){} 
        SSP1BUF     = *clr_r++;     
 

とするとSPIでは永久の待ちとなりデータは送信できない。

(続く) 

 

2025年11月30日日曜日

超音波距離計(その3)

1週間ほどで基板が届き、組み立てた。RGB-LEDのピンの間隔が狭くブリッジが出来て上手くハンダ付けができない。ブリッジの場所を探し出すのにパターンを切ったりして苦労したのでこれ以上ショートしないようUVレジンで固めた。その結果が次の写真である。ここではRGB-LEDのピンを左右に開くなどパターン作成に工夫が必要だ。


この 表示部はセンサー部から送られてきた測距データを表示する。

センサー部から送られる測距データは行が'='で始まり3文字目から測距結果を格納する。7セグLEDは実際に測定した距離を表示し、RGB-LEDは距離に応じて色を決めるようにする。

 7セグメントLEDは100回/秒くらいのレートでリフレッシュ出来れば十分なので10msに一回、つまり3桁で割って約3msくらいで割込み処理すれば充分だろう。という事で比較的簡単に実現できた。

表示用の割込み処理は次のようなものである。

static const byte swp_pos[3] = { 0x10, 0x20, 0x40 };
static byte dsp_dat[3] = { 0, 0, 0 };
static byte dsp_pos = 0;

void sevenSegLed_Isr(){
    LATC        = dsp_dat[dsp_pos];
    LATB        = swp_pos[dsp_pos++] | (LATB & 0x8f);
    if(dsp_pos >= 3)  dsp_pos = 0;
}

dsp_dat[]は7セグLEDに与えるビットパターンを格納している。

ちなみに数字を表すビットパターンは、

 static const byte SvnSegPtn[16] = {
        0x7e, 0x30, 0x6d, 0x79,  0x33, 0x5b, 0x5f, 0x70,    // 0..7
        0x7f, 0x7b, 0x77, 0x1f,  0x0d, 0x3d, 0x4f, 0x47     // 8..F
    };
を使っている。

(続く)

 

2025年11月19日水曜日

超音波距離計(その2)

 表示部は車の後窓付近に置きたいので、大き目の7セグ赤色LEDとワゴンセールで安価に入手したマイコン内蔵RGBLED(PL-9823、以下RGB-LED) を使う事とした。障害物との距離が近い場合は数字より色の方が感覚に訴える。

RGB-LEDはシリーズに繋ぐだけで使うことが出来る優れものである。 

7-セグLEDをアノードコモンにするかカソードコモンにするかであるが、コモン端子には大電流(最大160mA=各セグメントで20mA)が流れるのでPICでは直接駆動できなく適切なICが見付からなければトランジスタで駆動する事にする。このときアノードコモンだとPNPトランジスタを使う事となりそれをNPNでドライブするのでトランジスタの数が増える。一方カソードコモンだとNPNトランジスタだけでPICから駆動できる。 

各セグメントの駆動には電流制限のため(抵抗で済ますことも出来たが)試しに定電流ダイオードを使うが電圧降下が4V以上あり電源の5V供給では足りないため電源に12Vを使うこととなりPICには直結できない。そして次のような回路とした。(後で考えると電流制限は抵抗で済ませたほうが簡単で安価だった。)また20ピンのPICの抜き差しは面倒なのでプログラムはPicKitで直接書き込むようにした。

 電源は車のアクセサリー等から12Vを引いて使う予定だが上の回路図からは電源部は省略している。

そして次のような基板を設計し発注した。 

あとはソフトの制作だ。

(続く) 

 

2025年11月12日水曜日

超音波距離計(その1)

 以前作った超音波測距モジュールからブランチして超音波距離計を作れないか相談を受けた。車のバックセンサーとして使いたいというものだ。ならば車外のセンサー部と車内の表示部という構成にする必要があろう。先ずセンサー部だ。

超音波センサーには秋月で安価に売っているHC-SR04とUS-015があり、コネクタには互換性がある。HC-SR04はGPIOインターフェイスのほかI2CやUARTにも対応しているがUS-015はGPIOのみであり、ここでは両方使えるよう、また後処理を考えてGPIOを使うようにした。

単に距離を測れれば良いならば簡単なものだ。そこでPIC16F18313を使ってプロトタイプを作った。 電源は表示部から供給する。

簡単な回路なので、であっという間に完成した(電源のバイパスコンデンサやLEDランプは回路図からは省略している)。

ソフトも、距離だけ測れば良いので以前PIC16F18346用に作ったものをPIC16F18313用に簡略化して1日で出来上がった。PIC16F18313は内蔵タイマーが少ないのでTMR0を200ms毎の測定開始用、TMR1をエコー時間測定用、TMR2を100msのタイムアウト用として使っている。測定は毎秒5回行い、過去4回分を平均して結果として報告するようにしている。次は実際に動かしてみた結果の一例である(結果はcm単位)。

US Ranging313-3.01.013 for RH-Kager3 US-Sensor Rev0.1
Copyright(C) 2025 MYcrosLip.
= 56
= 56
= 45
= 33
= 21
= 21
= 33
= 45
= 56
= 60
= 83
= 111
= 122
= 156
= 190
= 205
 

超音波センサーの最大探知距離4mより大きな値は999cmとし、センサーから応答がない場合は998cmとして報告するようにしている。


センサー部は出来上がったので、次は表示部の検討を行う。

(続く) 

 

 

 

 

2025年11月7日金曜日

Multicore社のハンダ、使ってます

 エレキギターのエフェクターの修理動画を見ていたら修理にMulticoreのハンダを使っているという説明があった。私も昔からMulticoreの直径1mm/5コアの物を使っているが、敢えてブランド名を言うほどの優れものだとは知らなかった。

このハンダは就職して間もない頃、大阪日本橋の電気店で手頃の大きさ/太さだからと何も考えずに買ったものだ。当時はもっと太いハンダが主流で1mmの細いハンダは珍しかったように思う。もう半世紀近く使っているがまだ使いきれていない。しかしもう巻が一重強ほどしか残ってないので次をどうしようかと考えていた所であった。

ネット情報によるとMulticoreのハンダは音楽界隈で評判が良いようで、音が全然違うとか有名音楽家の機材に使われていたとか出てくるが、こういう方面はオカルト的であまり興味が湧かない。私の使用目的は主にデジタル回路で、8ビットマイコンの時代から使っている。

ヤフオクで検索するとMulticoreの古いハンダにけっこう高値が付いている。 少し気になるのはMulticoreのハンダのラベルにはオレンジ系の色が使われてERSINという名前が印刷されているが、一方私の持っている物は青(紺)色で、それにXersinと書いてある。オレンジ色の本物はMade in  Englandみたいだが私のはMade in U.K.とあり、まがい物か?

製品情報が欲しくてHPを検索するが、Multicore社は既に無くなっているようで検索しても会社のHPは出て来ない。 Copilotに聞いてみたらMulticore社はドイツのHenkel社に買収されたとの事。またブランド名XersinはHenkel傘下のLoctite社が2000年代以降に作った無鉛ハンダでErsinの派生品(改良品)との返事であったが私が入手したのは1980年前後だからCopilotは事実を反映していない。

経験豊かな知人によると、古いヤニ入りハンダはヤニが酸化していてよくないとの事で、じっさいハンダの濡れが良くなく液体フラックスを併用しているが、これは電線の表面が酸化している影響かも知れない。 ちなみに私が使っている電線はハンダと同じ頃に買ったフッ素樹脂被覆のジュンフロン電線(0.26mm)で本来はラッピング用だが被覆が熱に強くハンダごての熱でもびくともしないので配線用に愛用しいる。


私のハンダの事はよく分からなかったが、もう暫くMulticoreを使い続ける事になろう。 

 

2025年11月6日木曜日

ベリンガー A500 を修理(その2)

 ここで一度、全体を元に戻し症状を確認する事とした。というのは故障修理を依頼されたのはたまたま実家に帰った時であり、信号源も負荷も無く動作テストも出来ず、手元にあるのはテスターのみであった。

 自宅に持ち帰りテストを行うこととした。ただ高出力に耐えるスピーカーは持ち合わせていないので15Ω10Wの抵抗を調達し、各チャネルの負荷とした。入力にはオーディオジェネレータを用意した。動作を試してみるとチャネルBは正常に働く一方チャネルAには出力が出ていない。やはりチャネルAに問題がある。

ボリュームを上げるとチャネルBではボリュームに合わせてレベル表示のLEDが上昇するが(このレベル表示はスピーカー出力を全波整流して表示している)、チャネルAではレベルは上がらず代わりにレベル表示の上位にあるCLIPの赤いLEDが点灯する。 このCLIPはボリュームの中点を受けるOPアンプの出力を全波整流して点灯するようになっている(次回路のX7間にCLIPのLEDが接続されている)。

このオペアンプにはスピ―カー出力からの帰還がかかっているので、正常に帰還がかかっていればこの程度の入力でCLIPが点灯することは無いはずであり、それが点灯するという事は帰還ループの何処かが切れていてOPアンプがコンパレータとして動作している事になる。実際スピーカー出力は無く、レベル表示も上がっていない状態でのCLIP表示だ。

そこで再度OPアンプ出力から終段のTr迄の間の個々の部品をテスターを使って個別にチェックするが全て正常に見える。この時点で終段は怪しいのですでに新品に交換している。試しに2つのドライバーTrを取り外しチェッカーでチェックしたが特に問題はないようだ。この状態で入力信号を加えてみるとドライバーTrのベースには11Vp-pくらいの信号が来ていて特に問題は無さそうだ。う~~む、さっぱり分からない。

 ドライバーTrを元に戻し入力信号を加えてみると正常に動いている。なに?どうなっているの?

特に問題ないようなので元のように組み上げて入力を加えてテストしてみると、やっぱり出力が出なくCLIPのLEDが点灯する。さらにチャネルAのヒートシンクが熱くなる。組み上げる時にどこかでショートして異常な電流が流れている様だがどこかは分からない。組み上げた時に終段Trの電極が筐体(シャーシ)に近くなるのでショートしているのでは、と絶縁テープを挟んでみるが状態は変わらない。そのほか 基板の帰還ループに関係する配線がどこかで切れているかショートしている筈だ・・・再び分解してテストすると正常に動作したり異常になったり、だ。基板や部品に力を加えてみても状態は変わらない。クラックやショート、ハンダ不良では無さそうだ。

あれやこれやテストしている最中、本体から分離したチャネルAユニットのシャーシと本体のシャーシが接触すると火花が出る事があった。何か変だ、ここに電位差は無いはずだ。 試しにこの間の電圧を測ってみると、無音時(ボリュームが0の時)には電圧は無いが入力を加えボリュームを上げるとそれに応じて交流の電圧が生じ最大20Vを超える事が分かった・・・どこかで絶縁が破壊されている。いや待てよ、この電圧はスピーカに加わる電圧そのものではないか?

改めて基板を見てみると、 スピーカ出力のX4コネクタが怪しい。他のコネクタは方向が決まって逆向きに挿せないのにX4コネクタだけは方向性が曖昧で、じっさい逆向きに挿す事ができる。


配線を確認しX4コネクタを正しい向きに挿すとシャーシ間の電位差は無くなりアンプは正常に動作するようになった。 X4コネクタを逆挿ししてもチャネルAのユニットが電気的に浮いていて本体シャーシから切り離されていれば問題なく動作するが、シャーシを組み立てるとスピーカー出力が接地されOPアンプへの帰還が無くなる。この事でCLIP表示の現象を説明できる・・・原因はこれか。

という事で、ここには詳しく書いてない事を含め3週間ほどあれやこれやと調べたり部品交換したが、何十回も抜き差ししたX4コネクタの関係で迷走した。そして訳が分からないうちに故障は直っていた。まっ、いいか。そういう事もあるさ。

(終わり)